期待値の罠

まず、あるゲームの話をしたいと思います。

コインを投げて、1回目に表が出たらそこでゲームは終了し、裏が出たらもう一度コインを投げられます。

2回目で表が出たらまたそこで終了しますが、裏が出たらまた更にコインが投げられます。

こうして表が出るまでコインが投げ、表が出るの1回目なら1円、2回目なら2円、3回目なら4円、8円、・・・と貰える額が投げた回数ごとに倍々になっていくゲームがあるとすします。

表、裏が出る確率は同様に確からしいとして、あなたはこのゲームを1プレイ何円ならやるでしょうか?

 

「賞金少なすぎwこんなん10円でも期待値ないでしょw」と思った方、期待値を勉強しなおしましょう。

「賞金少なすぎwこんなん誰やらないでしょw」と思った方、直感的に正しい選択が出来ている素晴らしい数値感覚の持ち主です。

 

この二つは何が違うのでしょうか?それは「期待値」の話をしているのか「得かどうか」の話をしているのかの違いがあります。

 

まずは先ほどのゲームで貰えるお金の期待値を求めてみましょう。

期待値とは[起こる確率]×[貰えるお金の額]の総和で求められます。

1回目で表が出る確率は1/2、1回目裏が出て2回目に表が出る確率は1/2×1/2=1/4、・・・となり、n-1回目まで裏が出続け、n回目に表が出る確率は(1/2)^(n-1)×1/2=(1/2)^nとなります。

また、n回目に初めて表が出たときに貰える賞金は2^(n-1)円です。(2020年6月17日修正 ×:2^n ○:2^(n-1))

よってこのゲームの期待値はΣ[k=1→∞](2^k×(1/2)^k)=Σ[k=1→∞]1=∞となります。

つまり、このゲームの期待値は∞円なので、ゲーム参加料がいくらであっても、1億円であろうと1兆円であろうと、期待値的には参加した方が得、ということになります。

 

果たして、このゲームは本当に1億円出して参加する価値があるゲームなのでしょうか。

確かに、このゲームを時間の限りがなく、資金も無限にあり底をつきないとし、それこそ「無限に」プレー出来るのであればいくら出しても参加するべきです、無限の富を築けることでしょう。

しかし、人間の時間は有限ですし、資金も有限です。

無限の時間の果てに100回連続裏を引いて2^100円手にすることも出来ません。

それに、2^100円手にしても使い切ることは出来ません、毎秒5000兆円消費しても800万年以上かかります。

このようなあり得ない馬鹿げた額の賞金も含めた期待値を考えているため無限に発散するのであり、実際にこのゲームを現実的な範囲内で得かどうかを判断する際には考慮すべきでないのです。

 

 

これが期待値の罠です。

期待値を追い求めることも大事ですが、用法・用量を守って正しく使いましょう。